教団を守るように茂る森の中に堂々とそれは建っていた。 ちょうど教団の食堂と同じくらいの大きさで、全面がガラス張りになっていた。 朝日を浴びたその建物は、四方八方に光を反射させていた。 光を反射させるガラスの面と、その建物の銀枠組みがなければそこに建物があるなんてわからないだろう。 昔から教団にいたが、こんな建物いつの間にできたのだろうか。 その室内には、色とりどりの様々な植物があった。森ができているようだった。 低く生える雑草達を足の裏に感じてその不思議な建物に近付く。




バサバサッ…




どこかで鳥が飛び立つ音がした。 スライド式のガラスの扉を開け、中に足を踏み入れる。中は紅色のレンガが敷き詰められ、真っ直ぐ道が延びていた。 植物の鬱蒼と茂る植え込みに枝分かれしていた。手入れするためだろう。よく見ると間を縫うように水路が通っていた。 水路もレンガでできていて、絶え間なく水が流れている。その水で植物の水分を補っているように見えた。 さらに奥まで進むと、植え込みだけではなく鉢に入った植物なども美しく並べられていた。 鉢には植え込みに生える植物以上に不思議な植物が植えられていた。どの植物も見たことがないような植物ばかりだった。 特に目についたのは、丸い葉を持つ花だった。その花は睡蓮のような花を咲かせ、丸い葉からは銀色の光が放たれていた。 蓮の一種か?しかしそれは蓮のような植物よりもっと違った雰囲気を醸し出していた。 葉にそっと手を伸ばす。




「素手で触らないで。」




ピタリ、と手の動きが止まった。一瞬その蓮のような植物が喋ったのかと思った。 俺より大きいくらいの背の高い花の根本から足が延びてきた。やがてそれは全貌を現した。




「いたのかよ。」
「まーね。これ植えたのあたしなんだよ。」




嬉しそうに顔に泥をつけて笑う がいた。 こいつの性格からして植物を植えるなんてありえないと思ったが、両手にもつ植物の山はそれが嘘ではない事を無言で知らせていた。




「それ、薬草なの。素手で触るとかぶれちゃうから。ここそーゆうの多いからねぇ…。あ、軍手使う?」
「いらねぇ。」
「あそ。」




そしてまた は背の高い花の根本にしゃがみこみ、ぷちぷちと雑草を抜き始めた。 大変そうだったが、どこか楽しそうだった。




「…これ誰が建てた?」
「ん?あたし。自分でお金貯めて作ったんだー。すごいでしょ。」
「暇な奴だな。」
「えー、そんなこと無いよ。あたしだっていそがしくて管理できない時もあるから水路まで作ったんだから。」




何故かは自分でもよくわからなかった。ただ単に気が向いただけなのかもしれないが、背の高い花の根本にしゃがみこみ、雑草を抜く。 悪くはない。




「……ありがとう。」
「別にテメェに礼なんざ言われる筋合いねーよ。」
「ツンデレユウたん…。」




の顔に肘鉄を食らわせた。鈍い音がすると、 は顔を歪めた。




「うっ…いったいなーもう。」
「自業自得だろ。」
「えーそれマジでぇー?」
「さっさと黙ってやれよ。」
「はいはい。」




一通り雑草抜きが終わった。手の泥を払い落し、レンガの床に腰を下ろす。 横を見たら がいなかった。 しばらくして急に眼の前が白に包まれた。清香がふわりと漂う。




「プレゼント。」
「…いらねぇ。」




真白な花だった。赤茶色の鉢に入っていて、綺麗に植えられているようだ。




「もらってよ。あ、いや。もらいなさいユウたん。」
「その呼び方やめろ。」
「もらってくれないとユウたんって言い続けるから。」
「…もらえばいいんだろ。」
「うん!」




鉢を から受け取る。とても嬉しそうに笑っている。視線をもらった花に目を落とす。 それはとても可愛らしかった。




「こーゆうときにね、植物育てててよかったなぁって思うんだ。」
「テメェが強引に渡したんだろ。」
「それを言っちゃぁだめだよ。」




少し困り気味に笑う が隣に座った。ずっと楽しそうに笑っていた。 最近ではこんな感じも悪くはなく思えてきた。


























  花園











何度も通う場所





(2008.10.11 このネタ書きたかった。)